前回の続きです。
クリエイティブな活動に燃えた大学時代だったのですが、
何度か出版社にギャグ漫画を持ち込んだのですが良い結果は出ず。。。
ついに楽しかった大学生活に、焦りと不安が生まれてきます。
でも逃げ道は用意されていました。
漫画が上手くいかなかった時の保険代わりに、超・テキトーに就職活動をしていたのでした。
「一部の仲間たちは、こんな自分を軽蔑してるだろうな」と、被害妄想さえ感じ始めました。
目次
大手証券会社に内定!なじめそうにない環境…
しかし、驚くことが起きました。
まったく頑張ってなかった就職活動ですが、数社だけ受けた中の1社に内定してしまったのです。
それは「大和證券」という証券業界2位の大手でした。
「これはマズイ!」どうしようと、真剣に迷いましたが、これを逃したらチャンスはない!
そう思い、入社してしまったのでした。。。苦笑
証券会社って営業中心の会社ですから、内定者を見ても僕みたいな文化系は少数派でした。
アメフトなどの体育会系が多く、まさに「脳みそ筋肉」系の人ばかりでした。
あとは、すごーく「お調子者」とか、とにかく僕が苦手なタイプばかりでした。。。苦笑
入社早々の歓迎会が普段仕事をするオフィスで開かれたんですが、ビールを頭からかぶったりとかね。。。
みんな爆笑してましたが、ぼくは「誰が掃除するんだ」とか考えちゃって、もうなじめそうにありません。。。
一方で、数少ない文科系の内定者は、いかにも優秀そうな人ばかり。
話を聞くと東大の大学院卒で、すでに本部勤務が決まっていると言うではありませんか。
もちろん僕たち普通の学生は兵隊扱いですから田舎の支店勤務は確定しております。苦笑
なんだかなあって感じ。
入社早々にグレるというバカな自分
ちなみにリクルーターも、どうも話が合わない。。。
なのに、なぜ僕を採用してくれたのか、理解に苦しむ感じ。苦笑
聞けば「大学時代はボクシングをやっていた」という日焼けして真っ黒の、いかにもな感じのイケイケな感じの兄ちゃんでした。
良い人でしたが、こういう印象の人が優秀な営業マンになるだと思うと、証券業界って、、、と、先が思いやられるというか・・・。苦笑
ちなみに就職活動の「リクルーター」って仕事は、どこの会社も若手のホープ(トップ営業とか)が担当するんです。
トップ営業はご褒美に海外留学し、箔が付いて帰国したらリクルーターを経験し学生を魅了する、その後、本部に栄転するのが出世コースなのです。
とはいえ、こんな感じのチャラい人がトップ営業になれるというのが、ある意味で入社する前から不安ではありました。
もちろん、真面目な感じのリクルーターさんもたくさんいましたけどね。
でもやっぱり、そういう人は真面目で大人しいキャラながらも、社内でうまくやってますよね。。。
一方で僕はまだ若く、いつも「ツンツン」してたので、
この状況に「やってられるかこんなもん!」ってスタンスでもって、
入社早々「グレて」しまっていたのです。。。
バカですよね。。。
独身寮が強制入寮って刑務所か!
そんな営業系の会社なので、僕の性格上、まったく肌に合いません。
なんで、そんな会社に入っちゃったんだ?と、思うかもしれませんが、
「憧れの大手企業」という看板に負けたと言っても良いでしょう。。。
しかし、周りが体育会系だけならまだしも、これはもう駄目だと思ったことがありました。
マジで辞めようと思いました。
それは、独身寮に入寮させられたことです。
しかも強制で、選択の余地はありません。
うそでしょー? 入社早々「罰ゲーム」かと。
しかも大学時代に住んでいたアパートはボロボロでしたが気に入っていました。
立地も良かったですし、家賃も4万円で安く、築30年なのに風呂とトイレ付きです。
一方で独身寮は、風呂とトイレが共同です。。。
普通は会社が借り上げたワンルームマンションとかに住めると思うじゃないですか?
でも、それは中小企業がやることでして、大手企業ともなると独身寮を自前で作っちゃうんですよねー。
綺麗な共同トイレと共同風呂、綺麗な共同の食堂、そして優しい寮母さん・・・。
そんなもん、僕にとっては全然嬉しくありませんでした。
ちなみに独身寮の周りには、ものすごく高い塀がぐるっと張り巡らされています。
ビックリですよね、リアルにミニ刑務所かと思いましたよ。苦笑
イライラが徐々に大きなストレスに変わっていきました。
プーチン人事部長と対決!しかし、まったく歯が立たず!
とにかく、こんな独身寮からは早く脱出しなければ!
そう思いました。
なんで社会人になって、ていうか二十歳過ぎて住むところすら自由に選べないのだ?と。。。
そこに理解ができませんでした。
そして、ついに我慢できずに近所のエイブルに飛び込んで、良さげな物件をいくつか紹介してもらいました。
もちろん、いくつか良い物件は見つかりましたよ。
さあ物件を見つけたら、次は会社の許可を取らねばなりません。
人事部長に「自分でアパート借りますから、寮はもうけっこうです。」と言ったんです
すると、淡々とこうおっしゃいました。
「それは当社の規定では難しいですね。」
「独身寮から研修地まで電車で1時間ですし、何か意味があるのでしょうか?」
「それなりに意味があるからそうしてます。」
こちらが何を言ってもNOで、あえなく撃沈しました・・・。
この人事部長は、当時はまだ無名だったロシアの「プーチン」にそっくりで、
クスリとも笑わない鉄仮面みたいな人だったのです。
あまりにもそっけなく、これは無理だな・・・と思い早々にあきらめました。。。
直属の上司と対決!やっぱ歯が立たず!苦笑
しかし、こんな刑務所のような寮などは一刻も早く出たい。
そこで、「ダメもと」で直属の上司にお願いすることにしました。
すると、かなりムッとした感じで、こう言われたのです。
「あのね、会社の寮ってのはね、君たちの日常の振る舞いも評価の対象にしたいってのもあるんだよ。」
もうね、愕然としましたね。。。
おいおい、休みの時間も会社の管理下かよ、と。。。
ちなみに、今の時代ならブラック企業認定されそうな発言ですが
もうかれこれ20年以上も昔の話ですからこんなもんです。苦笑
また、当時の僕は法学部ですし、バリバリの「左翼」先輩たちとも親交がありましたから、法律や労務、権利義務には非常に敏感です。
「何を言ってんだオマエは。」と真剣に心の底から思いました。
ここで怒りはMAX、もう絶対に辞めてやると決意したのです。
満員電車でノックアウト!もう無理!
でも、なかなか決断できない自分もいました。
大企業をこんなに簡単に辞めてしまうことに「もったいない」というズルイ感情もあったのです。
せっかく入社した大企業ですから、もう少し辛抱しようと思ったんです。
あれは入社3日目くらいでしょうか、今までに無く強烈な満員電車に遭遇しました。
毎年4月は都内に人が増える都合で満員電車の混みあいはMAXになるのですが、この日は異様にすごかった。
同僚たちと一緒に電車に乗っていたんですが、もう、圧死するんじゃないかと言うくらいの混みあいでした。
しかもその頃は体重も今より20キロくらい軽かったですからね、かなりの押しつぶされ感でしたよ。
しかも初めての満員電車での通勤なわけですから、このインパクトは凄まじいものがありました。
上京して間もない人が都内の満員電車にヤラれて田舎に帰ってしまうというエピソードも、
都内のリアル満員電車を経験すると納得できると思います。
しかもね、一緒に乗ってた同僚も、ムギューって、ずっと押してくるんですよ。笑
そいつが、関西弁でよくしゃべるちょっと面倒臭いヤツでして。
「まじでテメエ押すな、壁になれこの野郎!」って思いましたね。
仕方ないことではありますが、イライラしましたねえ。苦笑
翌日「辞めます」と上司に報告・待機中テイルズをやる
そして、独身寮に加えて、こんな満員電車を何年も味わうのかと思ったら、強烈に嫌になりまして。
まだ漫画やお笑い芸人の仲間たちとつながりはありましたし、
彼らを見てると「サラリーマンがこんなに大変なら漫画を書いてたたほうがラクだ」と思ったのです。
翌日くらいですかね、上司に
「すみません、これからマンガ描きますんで会社辞めます。」
と、伝えてしまったのです。
たぶん、出社して3日くらいだと思います。
情けない話ですねえ・・・。
しかし、とりあえず会社の指示を待たねばなりません。
人事部長とも面談をしろと言われまして、しばらく待機です。
とはいえ自由のない独身寮で、出社せずにボーっとしているわけにもいきません。
どうしようかな、これから。。。
とりえあず待機してる間は何もすることが無いので、ゲームを始めました。苦笑
まだ覚えてますが「テイルズオブディスティニー」というRPGでしたね、ずっとやりたかったんですよね。
会社の独身寮に閉じこもって、3日ほどでRPGクリアですよ、何やってるんだか。。。苦笑
漫画は楽しくないのかもしれないと気がつく
後日、退職届を正式に出すため、役員の営業部長さん(もうじいちゃん)と面談しました。
ものすごーく怒られました。
そして、この一言。
「君がこういう形で辞めると、来年から君の母校の採用枠が減っちゃうよ?」
と言われまして、
「そうか、後輩に迷惑かけちゃうのか。。。」
と、申し訳なくなった記憶があります。
まあ、これも今ならブラック認定されそうなセリフですけど、20年以上前ですから仕方ありませんね。。。
結局、大企業に入社したんだけど早々に退職。
大学時代と同じ、まったく芽の出ない暗黒の漫画家・作家志望生活を始めたのです。
とはいえ、これまた大学時代のように、自ら社会人漫画サークルを主宰するなど、けっこう楽しくやってたんですよ。
でも、しばらくして思ったんです。
社会人になってもマンガを書いてるサークルの仲間を見てると「本気度」が違うなと。。。
いや、「本気度」というか「好き度」なのだろうか。。。
というのもマンガを描いてて「面白くないなあ」って感じる時が頻繁にあったんです。
義務感で書くってのは、こんなつらいのかと。
アイデアが出ないと、こんなにつらいのかと。
こういうのって気分が乗ったときにパーっと描いて、友達とかに見せて一緒に喜ぶのが楽しいんだよなって。
結局、社会人時代も、出版者に何度か足を運んだものの、結果は出せなかったのでした。。。
とはいえ、「もうあきらめよう」、そう思うまで、しばらく時間はかかりました。
<オマケ>
むかし僕の主催してた漫画サークルの会報に載せてた4コマ漫画です。
「漫画家を目指した話」シリーズの末尾に1本ずつ載せてますので見てね。
https://inumakedon.com/ankoku-shakaijin/